今日の聖書は「力尽きて人生の明日が閉ざされる苦悩」の中にある人々が出てくる。
　十二年間出血が止まらない女性と十二歳になる一人娘が死の床にあり、必死で娘の病気を治そうと走りまわって力尽きている父親が主イエスのもとに来て足元にひれ伏している。
　ここからもう一つの世界に導かれる。「娘よ」と主に呼びかけられて、神の家族として招かれ救われる。
　十二歳になった一人娘と、この一人娘と同じ十二年間病に苦しむ女性が思いもよらない救いの世界に導かれる。
　十二年間病に苦しんでいた女性は、律法が支配する社会の中で社会的に疎外されていた。出血が止まらないという病は汚れた者とされた。律法によって人に触ることも、触れられることも禁止されていた。触った者も、触られた者も汚れると見られていた。
　この病の故に、社会的に、身体的に、経済的に苦しみ、全てを失って疲れ果てている女性だ。
　「この女が近寄って来て、後ろからイエスの服の房に触れると、直ちに出血が止まった。」（44節）
　出血の故に汚れていると見られ人前に出ることが禁止されている女性が、律法を破って無我夢中になって必死に主イエスの服の房に触れた。「イエスの服の房に触れると直ちに出血が止まった。」
　主イエスの内に神の力がみなぎっている。主イエスは瞬時にこの女性の痛みを受け止められ癒された。
　「イエスは、『わたしに触れたのはだれか』と言われた。」（45節）と問いかけられている。群衆は押し合ってイエスとともにヤイロの家に急いでいた。だれが触ったのかは分かるはずがない。
　主イエスに必死にすがるこの女性の痛みを感じ取っておられる。そして、強く「わたしに触れたのはだれか」と問われる。女性の方から名乗り出るのを主イエスは待っておられ、女性の信仰を引き出そうとされておられる。
　癒された女性は会堂長のように、震えながら恐れおののいて主の足元にひれ伏す。そして、自分に起こったことを、主イエスがわたしの内に働いてくださったことを語る。
　その時、「娘よ、あなたの信仰があなたを救った。安心して行きなさい。」との主の御言葉が響き渡る。「娘よ」と語られる主の言葉に注目させられる。この女性は「神の家の家族」として神の世界に招き入れられている。
　「娘よ、あなたの信仰があなたを救った。安心して行きなさい。」との神の言葉が礼拝に響く。
　この御言葉が、疲れ果てた生活からわたしたちを救い上げてくれる生きる力だ。