「伝道を楽しむ」  石橋秀雄牧師

 


「 イエスは神の国を宣べ伝え、その福音を告げ知らせながら、町や村を巡って旅を続けられた。 」

(ルカによる福音書8章1節)



 
 十二弟子と婦人達が主イエスを中心に伝道の旅をしている。
 「神の国の福音を告げる」の部分を加藤常昭先生は「神の国を喜びとして語る」と訳す。
 主イエスは「神の国の喜び」を語る。この喜びに包まれて旅をする弟子たちは活気に満ち、喜びにあふれて主の伝道を楽しんでいる。
 ルカのみが、十二弟子以外に婦人達も主イエスの伝道に従っていることを記す。
 「マグダラのマリア、ヘロデの家令クザの妻ヨハナ、それにスサンナ」と三人の婦人の名前が記されている。
 マグダラのマリアは七つの悪霊に侵されていたと記される。病は悪霊の仕業だとされている。しかも七は完全数だ。単に七つの病気という以上に様々な病に侵され、心も体もズタズタに引き裂かれ、社会の闇に沈んでいた婦人だ。
 このマグダラのマリアが神の国に招き入れられ神の愛に包まれ、救われるという強烈な救いの体験をする。主イエスは「神の国は来た」と宣言をされる。主イエスと共に生きる事が神の国に生かされる事となる。それゆえに主イエスと共に歩むことは、神の国に招かれた喜びにあふれて生きるものとされる。
 三人の婦人達は、主イエスと共に最後まで歩みぬいた女性たちだ。
 十字架で苦しみ死んでいく主イエス、墓に収められた主イエスを見続ける。
 到底直視できない主イエスの死と、墓に納められる絶望を味わい尽くしたのだ。この絶望の深みで、墓で、到底神が働いているとは思えない墓で、婦人たちは神の業を見る。
 婦人たちは、「週の初めの日の明け方早く、準備しておいた香料を持って墓に行った。」(ルカによる福音書24章1節)
 そこで神から遣わされた輝く衣を着た二人から「なぜ、生きておられる方を死者の中に捜すのか。あの方は、ここにはおられない。復活なさったのだ。」(5〜6節)と主の復活が知らされる。「マグダラのマリア、ヨハナ、ヤコブの母マリア、そして一緒にいた他の婦人たち」(10節)は喜びが爆発して、十二弟子に知らせ、さらに誕生した教会の伝道力となる。

 越谷教会月報「みつばさ」2022年11月号より



画像:「蒼に浮かぶ教会」 撮影y.f.  絵は井上直氏の作品です。