「めん鳥が雛を羽の下に」  石橋秀雄牧師

 


「エルサレム、エルサレム、預言者たちを殺し、  自分に遣わされた人々を石で打ち殺す者よ、めん鳥が雛を羽の下に集めるように、わたしはお前の子らを何度集めようとしたことか。だが、お前たちは応じようとしなかった。」 

(ルカによる福音書13章34節)



 主イエスの嘆きの言葉が、私たちの心を刺し貫く。
 主なる神は、何度も何度も雛を親鳥の羽の下に集めるように、イスラエルの人々を集め続けた。しかし、神の都エルサレム、神を礼拝する中心地エルサレムで激しく神を拒否し、神の言葉を語る預言者たちも殺され続けたと主イエスは嘆かれている。
 神の最も近いところで重大な罪を犯し続けてきたのだ。
 「ここを立ち去ってください。ヘロデがあなたを殺そうとしています」
と告げる者がいた。これに対して「あの狐に、『今日も明日も、悪霊を追い出し、病気をいやし、三日目にすべてを終える』とわたしが言ったと伝えなさい。」と主イエスが語られた。ヘロデは「主イエスが聖なる人ヨハネの生まれ変わりだ」と信じて恐れていた。
 領主ヘロデは、違法な結婚をヨハネから批判されて逮捕する。逮捕したヨハネであったが、ヘロデは「ヨハネは正しい聖なる人」であることを知って、恐れながらも喜んでヨハネの話を聞いていた。
 領主ヘロデにとってヨハネの話は耳の痛い話ばかりだったと思われる。 しかし、当惑しながらも、聖なる人、預言者として喜んで聞いていた。
 ヨハネの言葉を聞くヘロデ、この時、ヘロデにとって最も神に近い時だった。神の言葉を喜んで聞いていたのだ。誕生日の祝いの席で少女の踊りを喜び、領主を誇示するような約束をしてしまう。「欲しいものなら何でも、国の半分でもあげよう」と約束する。
 そこで求められたのはヨハネの首であった。ヘロデは心を痛めながらも聖なる人、預言者の首をはねてしまう。
 「あの狐に伝えなさい」とヘロデを蔑視する言葉に聞こえる。しかし、それだけではない。神の言葉を喜んで聞きながら、その時を失うだけでなく、取り返しのつかない罪を犯すヘロデであった。
 この領主ヘロデの姿は旧約聖書の歴史、エルサレムの、喜んで神の言葉を聞きながら、預言者たちを迫害し神に逆らう歴史と重なる。
 主イエスは、エルサレムで殺される最後の預言者として十字架の道を進んで行かれる。その救いを三日の後に完成される。
 ヘロデも主の憐れみの中にある。赦されない罪を犯した者が、復活の主に招かれる。どのような罪の中にあっても、復活の主は大きな翼を広げて、その救いの内に招いてくださっているのだ。

 越谷教会月報「みつばさ」2013年10月号より



画像:「さかさまの虹(環天頂アーク)」は 朝焼け・夕焼け写真日記からお借りしました。