September


 
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ペリシテ人は、盾持ちを先に立て、ダビデに近づいて来た。 彼は見渡し、ダビデを認め、ダビデが血色の良い、姿の美しい少年だったので、侮った。
(サムエル記上17章41〜42)


 紀元前11世紀後半になると、イスラエルはようやく宿敵ペリシテ人との戦いに勝利を収められるようになってきました。しかし王であるサウルと預言者サムエルとは互いに意見が合わず反目し合うようになってきます。サムエルはそろそろイスラエル王国に別の新しい王を立てる時期がきたと考えました。そして主の言葉通りに雌の子牛を連れてユダの地ベツレヘムへと向かいました。サムエルは町へ入るとエッサイとその息子たちに生贄の儀式の際に臨席するようにと求めました。しかし儀式に現れたエッサイの7人の息子たちを見て、「主の選ばれたのはこの者たちではありません」と言いました。エッサイがまだこの下に羊を飼っている末の息子がいることを告げ、彼を呼びにやらせました。
 サムエルのもとに「血色のよい、目のきれいな、姿の美しい」ダビデが連れてこられると、主はサムエルに「立ってこの者に油を注ぎなさい。これがその人である」と命じたので、サムエルはダビデに油を注ぎ生贄の儀式を執り行いました。
 「主の霊はサウルから離れ、主から来る悪霊が彼をさいなむようになった。」(サムエル記上16章14節)。
サムエルからの支持を得られなくなったサウル王は、不安と憂うつの発作にみまわれるようになりました。王の心をいやすことができない家臣らは策を練り、竪琴が巧みであると評判のダビデという若い羊飼いをベツレヘムから連れてきて、竪琴を弾かせました。ダビデの奏でる音楽はサウルの憂鬱な気分を和らげることが出来たので、たちまちこの若い竪琴弾きは宮廷のお気に入りとなりました。サウルはこのダビデが、主が自分の替わりに選んだ新王であるとは夢にも思わなかったことでしょう。
 ある日羊の番をしていたダビデに、サウルの軍にいるダビデの兄たちに届けものを持たせ様子を見てくるようにと父エッサイが言いつけました。イスラエル軍はペリシテ人との戦いのためにユダの山岳地帯のふもとのエラの谷に勢力を集結していました。ダビデがサウルの野営地に入ったとき、両軍の戦士たちは戦闘体勢に入ろうとしていたところでした。ダビデは持ってきた贈り物を武具の番人に預けるとイスラエル兵のもとへ走って行きました。兄たちはダビデを見つけると驚いて、立ち去るように命じましたが、ダビデは聞きませんでした。
 その時ガテ出身の巨人ゴリアテがペリシテ軍の戦列から出てきて叫びました。
 「おまえたちから一人を選んで、わたしのところへ下ってこさせよ。そいつがわたしを倒すことができたら我々はおまえたちの家来になろうじゃないか。もしわたしが勝ったらおまえたちは我々の家来になって仕えるのだ!」
 この当時戦士が軍を代表して決闘することはよくあることでした。戦いが長引き互いに勝敗を確信できないときにはこういった方法で戦いの決着をつけたからです。
しかしながら、ゴリアテは身の丈6キュピト半(約3m)という巨人で、しかも青銅の冑をかぶり、青銅のすね当と重い鎖帷子を着け、青銅の投槍を装備していました。イスラエル軍の兵士はしりごみをし、ゴリアテの挑戦を受けて立とうとする者は一人もおりません。ダビデは恐れて後退しているイスラエル軍にがっかりすると大声で「生ける神がいる私たちの戦列に挑戦してくるとは、あの無割礼のペリシテ人は一体何ものなのだろう」と叫びました。
それを伝え聞いたサウル王はダビデを膝元に呼び寄せました。するとダビデは臆さず
 「私は羊飼い、羊を守るためならば獅子でも熊でも倒します。主はわたしを獰猛な獣たちからも守って下さったのですから、あのペリシテ人の手からも守ってくれることでしょう。私を戦いに遣わせて下さい。」と願い出ました。
 サウルは自分の装束をダビデに着せようとしましたが、ダビデは軽やかないつもの羊飼いの服装で行くことを望み、自分の杖を手にしました。そして川岸で滑らかな石を5つ選び羊飼いが常用している投石袋にしまい、羊飼い用の投石器を手にすると、ペリシテ人に向かって行きました。
 ゴリアテは向かってきた相手がなんと年端も行かない少年で、しかも姿も女性のように美しくスラリとして華奢なのを見て、侮りました。
 「なんという愚かな者よ、ただの杖だけで私に向かってくるとは。わたしが簡単にお前をやつけその肉を空の鳥や野の獣にくれてやろうではないか。」
 ダビデも負けじと叫びました。
 「お前は剣や槍で立ち向かってくるが、私は万軍の主の名によってお前に立ち向かう。全地はイスラエルに神がついていることを知るであろう。主がお前たちを我々の手に渡される。」
 ペリシテ人ゴリアテは身構えると近づいて来ました。ダビデも走り戦いの場に駆けつけると、素早く袋から石を取り出すと、投石器を使って石を思い切りはじきました。石は正確にゴリアテの額を直撃し、彼はうつ伏せに倒れました。ダビデはゴリアテに走りより彼にまたがり、ゴリアテの剣を取り彼の首を切り落としました。自分たちの勇士が殺されたのを見たペリシテ人は慌てて逃げ出しました。イスラエルとユダの兵は立って鬨の声を上げるとペリシテ人を追撃して行きました。ダビデはゴリアテの首を抱きエルサレムへの凱旋をしました。この決闘とそれ以後のめざましい活躍によって、ダビデは一躍国民的英雄になって行きます。サウル王の息子ヨナタンもこれ以後ダビデを深く愛し、兄弟の契りを交わすまでになりました。