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イエスは、これを聞いて会堂長に言われた。「恐れることはない。ただ信じなさい。そうすれば、娘は救われる。」 |
(ルカによる福音書8章50節) |
イエスはカファルナウムの町で神さまのことを教えておられました。そこへ会堂長のヤイロという人がやってまいりました。会堂長というのは、会堂毎に一人置かれていて、礼拝のことや、会堂のことを司っていた人です。当時、それなりの地位があった人でした。主イエスはよく安息日の会堂で教えられましたから、もしかするとこの人は主イエスと顔見知りであったかもしれません。ヤイロと名前が特定されていることからも、この人が知られ尊敬されていた人であったのでしょう。
ヤイロには、とてもかわいがっている十二歳の娘がおりました。その娘が重病になってしまったのです。主イエスが湖から上がってくると真っ先にやってきて、主イエスの足下にひれ伏して願い出ました。
「大事な娘が死にかけています。どうぞ娘の上にあなたの手を置いて、病気を治して下さい。」
ヤイロは早くイエスを自分の家にお連れしたくて焦っておりましたが、大勢の群集に阻まれて思うように前に進めませんでした。
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そのとき人ごみをかき分けるようにして一人の女の人が近づいて来て、必死に手を延ばしてイエスの着物の裾にさわりました。この人は十二年間も出血が止まらなくなる婦人病の一種で苦しんでいました。彼女も、また彼女が触れた人、彼女が使ったものも汚れていると皆から疎んじられていました。彼女は主イエスが病をいやされ、悪霊を追放される方であることを聞きつけてすがる思いでやってきたのです。「この方の服にでも触れればいやしていただける」と。主イエスの服に触れると、すぐに出血が止まって病気が癒されたことを体に感じました。
その時、主イエスは、自分の内から力が出て行ったことに気がつき、群衆の中で振り返り、「わたしの服に触れたのは誰か」と言われました。
弟子たちはあきれたように
「こんなに大勢の人が押しかけて来ているのですから、誰がさわったかとおっしゃてもわかりません。」
と答えました。その女の人は怖れ、震えながら前に進みでて、すべてをありのまま話したのです。
「申し訳ありませんでした。お着物の裾にでも触れば病気が治ると思いました。そうしたら本当に治ったのです。ありがとうございました。」
イエスは
「あなたの信仰があなたを治したのです。安心して家に帰りなさい。」 |
さて、ヤイロはイエスが女の人のために足を止められたので、気が気ではありませんでした。そこへ、会堂長の家から人々がやってきて会堂長にこう耳打ちをしました。
「お嬢さんは亡くなりました。もう先生を煩わすには及ばないでしょう」
会堂長の頭は真っ白になりました。せっかくイエス様が来てくだされば必ず救われると信じていたのに、こんなところで時間をくってしまったばかりに手遅れになってしまったのではないか、会堂長はそう思ったことでありましょう。そればかりではなく、「なぜ、イエス様は急いでくださらなかったのか」、あるいは「こんな婦人さえ現れなければ・・・」というような、身勝手な気持ちだったかもしれません。
それを見たイエスは
「恐れないで、ただ信じていなさい。」
とおっしゃると、ヤイロの家に向かって急ぎました。ヤイロの家では笛を吹く人や、大声で泣くのを商売としている人が大勢集まって大変な騒ぎになっておりました。お葬式の準備が始まろうとしていたのです。
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イエスは
「どうしてそんなに泣いているのですか。子供は死んだのではありません、眠っているだけです。」
と言い、人々を外に出し会堂長ヤイロと弟子たちだけを連れて、家の中に入られました。そして少女の床の傍らに身を屈め、「少女よ、起きなさい」「タリタ・クム」と言われました。すると娘はすぐに起き上がりました。両親はびっくりして娘に駆け寄りました。どんなに嬉しかったことでしょう。 |
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