イエスは見たところ普通の少年と同じように成長していきました。けれどもただ一つだけ他の子どもたちと違うところがありました。それは、イエスが一度も悪い行いをせず、真っ直ぐに育ったということです。大工のヨセフ一家の暮らしは決して楽なものではありませんでした。イエスは弟や妹の面倒を見たり、ヨセフの仕事を手伝ったりしました。
ユダヤ人の男子は13歳になると成人として扱われます。成人は律法を守る義務があったので、その一年前から準備のための教育が始まります。イエスも12歳になったので、親と共に過ぎ越しの祭りのためにエルサレムの神殿へ出かけることになったのです。 |
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過ぎ越しの祭りは先祖がエジプトから救い出されたことを記念して、神様の恵みを忘れないためにお祝いするイエスラエルでは最も大切なお祭りです。お祭りは7日間続きますが、どの人も少なくとも2日間は都に泊まって祝うのです。神殿には一日中香のかおりがたちこめており、中庭では律法の教師たちが問答形式で聖書を教えています。イエスは両親と一緒に礼拝を捧げ、教師の教えに耳を傾けました。
祭りの期間が過ぎて家に帰るときには、子どもたち、女たち、男たちが纏まって楽しかったお祭りのことを話し合いながら歩くのが普通でした。とにかく大勢の人達が一斉に故郷に向かうのですから、その混雑は計り知れません。だからイエスの姿が近くに見えなくても、ヨセフもマリアも「友だちと歩いているのでしょう」と気にも留めませんでした。ところがエルサレムから1日歩いた頃、イエスが友だちの中にもいないことが分かったのです。ヨセフとマリアは迷子になったのかと急に心配になりました。イエスを捜しながら道を引き返し、なんとエルサレムまで戻ってしまいました。 |
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街中を捜し回って、とうとう3日目に神殿に入ったヨセフとマリアはイエスが律法の教師たちを相手に堂々と話し合っているのを見つけました。教師たちは真剣な顔をしていました。
「うーん、なんて賢い子どもなんだろう。」
「いったい、どうして聖書のことがこんなにわかるのだろう。」
たった12歳のこどものイエスが、聖書の深い知識を身につけていることに、誰もが感心していました。マリアは、思わず駆け寄って厳しく声をかけました。
「いったいどうしてこんなことをしたのです。お父さんもわたしも、とても心配したのですよ。」
するとイエスは不思議そうな顔をして言いました。
「ぼくが天のお父様の家にいるのが、わからなかったのですか。」
ヨセフもマリアも、それがどういうことなのかよく解りませんでした。ただ、この子には不思議なことが度々起きるものだと思うのでした。
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ナザレの家に戻ったイエスは、両親をとても大切にしました。背丈が伸びるのど同じように、ますます豊かな知恵を身につけて、だれからも愛される青年となりました。神さまも、深い愛を注いで、イエスさまの成長を見守っておられました。 |
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