Jun

 

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ルツが腰を上げ、再び落ち穂を拾い始めようとすると、ボアズは若者に命じた。「麦束の間でもあの娘には拾わせるがよい。止めてはならぬ。 それだけでなく、刈り取った束から穂を抜いて落としておくのだ。あの娘がそれを拾うのをとがめてはならぬ。」
(ルツ記2章15〜16節)



 士師の時代にユダに大きな飢饉がありました。エリメレクは妻ナオミと2人の息子マロンとキリオンと共に、ベツレヘムを去って隣のモアブという国に移り住みました。エリメレクの死後息子たちはそれぞれモアブ人の娘オルパとルツと結婚しました。モアブ人もイスラエル人と同じく祖先をアブラハムの一族に遡ることができます。しかも同じ言語の方言を話していました。
 しかし、10年のうちに息子たちまで相次いで亡くなってしまったのです。ナオミは二人のモアブ人の嫁と共に残されました。ナオミは縁者のいる故郷が恋しくなって帰郷を決意しました。息子の妻たちには、モアブに留まって再婚するように勧めました。オパルはナオミの言うとおり残ることにしましたが、ルツは「年取ったあなたを見捨てて、どうして父の家に帰れましょう。私はあなたの行かれるところに一緒に付いて行きます。あなたの民はわたしの民、あなたの神は私の神ですから。」と言い張りました。
 ナオミとルツは大麦の収穫期の初めにベツレヘムに着きました。ルツは生計が立たないので、落穂拾いをするために畑に向かいました。イスラエル人の間では、モーセの遺訓によって、畑の落穂を拾うことは貧しい者の権利と認められていたからです。
 ルツは落穂を集めているうちに何時しかエリメレク族でナオミの親戚である裕福なボアズの畑に入っていました。ボアズは刈り入れの監督をするためにベツレヘムから来ていましたが、自分の畑で見慣れない女性が一生懸命に落穂を拾っている姿に目を留めて、「これは誰の娘ですか」と使用していた若者に聞きました。そのうちの一人が「あれはモアブの女で、モアブの地から姑のナオミと一緒に帰ってきたのです」と答えました。さらに若者たちは、その女性が朝早くに来て、少しの間も休まず働いている様子をボアズに告げました。
 ボアズはナオミが自分の一族であり、エリメレクの未亡人となったことを知っていたので、ルツに対して同情を持って接しました。自分の畑で落穂を拾い続けるよう、喉が渇いたら水がめから自由に飲むように、ルツに勧めました。食事の時間になると、彼はルツを食事の席に加わるように招き、さらに刈り手たちに、彼女が拾うので多めに穂を落としておくようにと密かに申し付けました。
 その日ルツは、夕方までに、驚くほど多くの大麦の落穂を拾い集めることが出来ました。彼女は集めた大麦を、被っていたベール(当時の女性は頭から肩まで重い布地のマントで覆っていました)に包み、ナオミの待つ家に持ち帰りました。ナオミは落穂の山を見て驚き、ルツの話を聞きボアズのお陰だと知ると喜びました。親類のボアズがナオミのことを気に掛けてくれ、しかも彼女に少しも恥をかかせぬような思いやりのある助け方をしてくれたからです。
 ナオミには食料の落穂を拾い集めることよりも、もっと気がかりなことがありました。それは当時イスラエルで広く行われていた「レピラート婚」と呼ばれるならわしのことでした。子供のない未亡人ならば、亡き夫の兄弟との結婚を希望する権利か認められていたのです。亡き夫に兄弟がないときは遠縁の人がこの義務を果たさなければなりませんでした。その男が未亡人の保護者(ゴーエール)となり、二人の間に生まれた子供が前の夫の財産を相続しました。しかし、ナオミは子供を産める年ではなかったし、ルツもモアブ人であった為再婚を期待してはいませんでした。今回モアブがルツに関心を持ってくれたことでナオミは策を案じました。
 収穫期が終わり脱穀の時期が来て、豊作の年ならばお祭りがあります。ナオミはルツを身を洗って、美しく装わせ、ボアズが大麦と籾殻(もみがら)とを篩(ふる)い分ける脱穀場に行くように言いました。「あの人が食事を済ませ、飲み終わるまでは気づかれないようにしていなさい。あの人が休むとき、その場所を見届けておいて、後で側へ行き、あの人の衣の裾で身を覆って横になりなさい」
 ルツはナオミの指示に従いました。その夜ボアズは目を覚まし、驚いたことに女性が自分の隣にいることを発見しました。ルツは即座に自分が誰かを明かしました。
 「わたしはナオミの娘のルツです。あなたの衣の裾を広げて、このはしためを覆って下さい。あなたは家を絶やさぬ責任のある方です。」
とルツは言い、それによって自分を家族に向かえ入れるようボアズに頼みました。
 しかしボアズは、自分より先にルツたちを保護しなければいけない近い親戚がいることをルツに話しました。ボアズは、もし、その男がルツへの権利を放棄したならば、ルツを家に迎え入れることを約束し、沢山の大麦を持たせてナオミの元へ送り返しました。


 後にボアズは、ナオミに最も近い親戚を含む町の長老たちの会合を召集しました。彼はナオミがエリメレクに属する土地を売ろうとしていることを彼らに告げ、優先権を持つ親戚の者にナオミについての責任を果たすよう機会を与えました。その男は喜んでその申し出を受け入れますが、ルツも引き取らなければならないと聞き、心を翻しました。なぜなら慣習により、もしルツが男児を産んだなら、その子は先夫の子孫となり、土地はその子に復帰するからです。
 そこでボアズは公式にナオミについて責任を果たし、ルツと結婚することを宣言しました。優しく献身的なルツは、以前と同様に忠実な嫁で、ナオミは末永くルツと共に幸せな生活を送ったということです。
 ルツは間もなく男児を出産し、その子はオベドと名づけられました。ナオミは誇らしげにその子を腕に抱きました。法的にもその子はナオミの孫とみなされていました。
 この物語の結末は、同時に重要なことがらの始まりとなります。
近所の婦人たちは、ナオミに子供が生まれたと言って、その子に名前を付け、その子をオベドと名付けた。オベドはエッサイの父、エッサイはダビデの父である。」(ルツ記4章17節)
エッサイの株からひとつの芽が萌えいで/その根からひとつの若枝が育ち
その日が来れば/エッサイの根は/すべての民の旗印として立てられ/国々はそれを求めて集う。そのとどまるところは栄光に輝く。
(イザヤ書11章1、10節)