ガリラヤ湖の北西の町カファルナウムはイエスのガリラヤでの伝道の本拠地となっていました。大工であった父のヨセフが亡くなってからは、母マリヤと兄弟たちを連れてカファルナウムに移っておられました。イエスが伝道の旅を一度終え、カファルナウムへ戻られると、その噂はまたたく間に広がり、町中の人々が集まってまいりました。イエスのおられた家の中は押しかけた多くの人で埋め尽くされ、戸口から溢れ通りまでいっぱいになっていました。 |
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そこへ中風(今の脳卒中の後遺症)の男の人が床(寝台)に寝たまま4人の友人に運ばれてやってきました。その人はもう何年も、自分で歩くことが出来ない状態でした。友人たちは、ぎっしりと詰まった人々の間をぬってイエスのところまで運ぶのは到底無理だと思ったのですが、諦めきれず方法を考え始めました。彼らはイエスが必ず治して下さると信じていたからです。
友人たちは家の外側にある階段を使って屋上にでました。その当時の家の屋根は、毎年修理する習慣があったので簡単なつくりになっていましたので、彼らはその屋根をはがし始めました。彼らは注意深く藁や粘土を剥がし、それを除けていきました。すると天井にぽっかりと穴が空いたではありませんか。中にいた人々はびっくりもしたでしょうし、また迷惑がったことでしょう。でも友人たちは中風の男を直したい一心で、とうとう天井に大きな大きな穴を空け、彼を床ごと吊り下ろしてしまいました。 |
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イエスはそれを見て怒られたでしょうか?いいえ、イエスは彼らの信仰をご覧になり、優しくこうおっしゃいました。
「子よ。あなたの罪は許されましたよ。」
それを見ていた律法学者の人々は、心の中で
「なんですって?神でもないのに罪を許すと言うとは。とんでもない。」
とつぶやきました。
イエスを快く思ってない律法学者たちはイエスを神の子だとは認めようとせず、かえって神を冒涜していると受け取ったのです。その心を読まれたイエスはこう言われました。
「あなたがたはどうしてそのようなことを考えるのですか?歩けない人に『あなたの罪は許された』と言うのと、『起きて、床を担いで歩きなさい』と言うのとどちらがやさしいと思いますか。私が地上で罪を許す権威を持っていることを見せてあげましょう。」
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そして、病人に向かって
「起きなさい。寝床をたたんで家に帰りなさい。」
とおっしゃいました。
すると、いままで何年も患って寝たきりだったその中風の男はすくっと頭を持ち上げ、両手をついて立ち上がったではありませんか。彼は、藁の寝床を担って礼をすると外へ出て行きました。彼を運んできた友人たちも、感謝の気持ちをあらわし、喜び勇んで帰って行きました。
周りで見ていた人々も
「こんな不思議な出来事は今まで見たことがなかった。神はこのお方になんと素晴らしい力をお与えになったのだろう。」
と口ぐちに話しました。
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