エリシャはギルガルやエリコを中心に預言活動をしながら地方を回っていました。ある時ギルガルが飢饉に襲われた時、土地の預言者たちは、野にある草の根やイチゴの類を捜し回り、かろうじて命をつないでいる状態でありました。エリシャがその町を訪れていた時、スープの材料の中に見慣れぬうりが入っていたことがありました。預言者たちはスープを一口飲んで、野うりが毒であることに気づき「ああ神の人よ、かまの中に、食べると死ぬものが入っています」と叫びました。エリシャは麦粉を少し持ってこさせそれをかまの中に投げ入れ「盛って人々に食べさせなさい」と言いました。そのとおりにすると、だれも病気になるものはなく、土地の預言者たちを驚かせました。
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エリシャの不思議な力の噂は、いちはやく隣国にも広まりました。北アラム人の王国シリヤのナアマンという有名な指揮官が重い皮膚の病気にかかって苦しんでいました。ナアマンはエリシャ噂を聞くと、ダマスコにいる自分の王からイスラエルの王に宛て、病気を治してくれるようにとの手紙を書いてもらいました。金銀と刺繍で飾った晴着の贈り物と手紙を持ったナアマンと従者はサマリアに向けて旅立ちました。イスラエル王はその手紙を読むと怒って言いました。
「私は殺したり、生かしたりすることのできる神であろうか。どうして病気の人を癒せというのだ。彼らは戦いを仕掛けているのだろう、警戒しなさい。」
これを聞いたエリシャは、そのシリア人に会わせてくれるように王に頼みました。シリアから来たナアマンの一行はエリシャの家の近くでエリシャの使いに会いました。
「あなたはヨルダン川へ行って7度身を洗いなさい」
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使いの者のそっけない答えに、ナアマンは侮辱されたように思い、またヨルダン川より自分の国の川のほうが良いのではと思ったりしましたが、最後には教えられたとおり、ヨルダン川へ出かけていき、川の水に浸かったナアマンはすぐに快復しました。
ナアマンは感激してエリシャのもとへ戻り沢山の贈り物を差し出しましたが、エリシャは何一つ受け取ろうとしませんでした。 この奇跡によって、イスラエルの神こそが唯一真実の神であることを悟ったナアマンは、ダマスコでもヘブル人の神を崇めることが出来るようにと考えました。
使いの者が帰ったあとで、エリシャの従者のケハジは密かにナアマンの後を追い、主人の代理と偽って銀1タラントと晴着2着を要求しました。その不正を「霊眼」で見ていたエリシャは激怒し、ケハジに呪いをかけました。 |
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束の間のイスラエルとシリヤの間の平和は終焉し、戦争が再び始まりました。エリシャは不思議な力を発揮して敵の襲撃時間と場所を予告しました。これを知ったシリヤ王はエリシャを殺害するための部隊を派遣しました。夜陰に乗じて、シリヤ軍がエリシャの家を取り囲んだ時、預言者は主の助けを請うと、兵士たちの目が一時に見えなくなりました。エリシャはその軍たちに
「これはその道ではない。私に付いてきなさい。あなたがたの尋ねる人のところへ連れていきましょう」と言うと、サマリヤまで案内し全員をイスラエル王に手渡しました。ヨラム王が兵士たちを処刑しようとすると、エリシャは反対しました。この慈悲深い行いが休戦をもたらすことになります。その後もエリシャは戦いのために予言や換言を行い続けました。
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また、エリシャは偶像礼拝を続けているアハブ王家を滅ぼすことを神から告げられ、若いイエフをヨラムに替わって王とするために油を注ぎました。イエフはヨラム王に対して謀反を起こし滅ぼしました。ヨラムの死を知った母イゼベルは、化粧をし髪を結い城の窓からイエフを見降ろしましたが、家来の宦官たちに突き落とされてしまいました。そして、以前エリヤが予言したとおり、異国の神々をイスラエルに引き入れイスラエルの神をないがしろにしたイゼベルの遺体は犬に引き裂かれてしまいました。 |
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エリシャは年老いて、死の病を患っていました。イエフの孫のヨアシュがイスラエルの王位に就いていましたが、ヨアシュはエリシャのお見舞いに来て、エリシャの面前で「わが父よ、わが父よ、イスラエルの戦車よ、その騎兵よ」とさめざめと泣きました。エリシャは病を押して起き上がると、ヨアシュ王と共に弓を引き、窓に向かって矢を放ちました。
「これはアラム軍を滅ぼす主の勝利の矢です。」
とエリシャは言いました。
また王に矢を地面に向かって射るように言いましたが、ヨアシュ王は三度地を射て止めてしまいました。
「あなたは五度、六度と矢をいるべきでした。今となっては、あなたは三度しかアラム軍を撃ち破ることができないでしょう。」
とエリシャは予言しました。
エリシャはその後亡くなりましたが、その後もイスラエルに対してエリシャの影響力は大きかったと言います。 |