見よ、イスラエルの人々の叫び声が、今、わたしのもとに届いた。また、エジプト人が彼らを圧迫する有様を見た。
今、行きなさい。わたしはあなたをファラオのもとに遣わす。わが民イスラエルの人々をエジプトから連れ出すのだ。」
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(出エジプト記3章9〜10節) |
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モーセはミディアン人と共に数年間暮らしました。そこでツィッポラとの間に二人の息子ゲルショムとエリエゼルをもうけました。
ある日のこと、モーセが羊の群れを連れて神が住むと言われているホレブ山(シナイ山)にやって行きました。そこで不思議なものを見たのです。柴の上に炎が揺らめいているのに、どうも柴は燃えていない様なのです。変だなと思い近づいてよく見ようとすると、炎の中から声が聞こえてきました。
「モーセよ。モーセよ。」
モーセは神様の声だと知ってびっくりしながらも履物を脱いでひれ伏しました。
「モーセよ。私はあなたの先祖の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である。」
モーセは神を直接見ることは恐れ多いと思い、顔を隠しました。
「私は、エジプトにいる我が民の苦しみを見、叫ぶ声を聞いた。モーセよ。私はおまえを王のもとへ遣わし、我が民をエジプト人の手より救い出し、おまえの祖先に与えると約束した乳と蜜の流れる土地であるカナンの地へ導き出すことにした。行け、モーセよ。行って王に言え。『我らに、荒野へ行って我らの神に犠牲を捧げさせよ』と。」
「どうして私のような者に、そんな大事な仕事ができるでしょう。」
「わたしはいつでもおまえと共にいる。さあ、安心して行きなさい。」
「私はこれから、仲間のイスラエル人 のもとへ行きましょう。でもあなたの名前を何と伝えればいいのでしょう。」
「わたしはある。わたしはあるという者だ。皆にそう言いなさい。」
「永遠に変わることなく在る方」であられる「主」(ヤハウェ)が、ご自身の契約に真実であり、永遠に変わることなくご自身の契約の民に深く関わってくださることを意味しています。そしてまた、ご自身の民一人一人に最後まで真実であられるということです。
それでもモーセはまだ怖気づいてこう答えました。
「しかし、あなたがわたしを遣わされたと言っても、人々はわたしを信用などしないでしょう。」
「おまえが手に持っているものは何か?それを地に投げてみよ」
モーセは手に持っていた杖を地面に向かって投げると、それは蛇になりました。
「手を差し伸べて尾を持ってみよ」
モーセは蛇の尾を掴むと、それはまた元通りの杖になりました。主はその他にも色々な術をモーセに授け、それを行って人々に主が付いていることを教え伝えよと言いました。
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「しかし、わたしは、生まれつき口が重く旨くものを言うことができません」
あまりにモーセがしりごみをするので、とうとう主は怒り、強い口調で
「アロンはおまえの兄弟ではないか。彼は雄弁家である。アロンは言うべきことをおまえに代わって人々に語り伝えるであろう」
と言い残し、姿を消しました。
モーセは主の命令に従うことにし、舅のエトロにいとまごいをして、妻子と共にエジプトへと向かいました。途中主の命令で荒野までモーセを迎えに来たアロンにあったのです。二人は共にゴセンに行き、長老たちを呼び集め、主の言葉を伝え、また数々の奇跡を行いました。彼らはアロンが熱をこめて話すのを聞き、モーセの術を見て次第に信ずるようになりました。
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その後、モーセとアロンはパロに拝謁の許しを得、宮殿へ行きました。新しいパロは長身で、純白の亜麻布をまとい宝石をちりばめた豪華な首飾りをつけ、黄金の杖を持って座していました。足元には雄ライオンが身を横たえていました。
アロンはそれにも恐れず進み出てこう代弁しました。
「イスラエルの神、主はこう言われる。わたしの民を去らせ、荒野でわたしのために祭壇を築き礼拝をさせなさいと。」
贈り物と称賛の言葉を期待していたパロはその傍若無人な言葉に怒り
「主とはいったい何者なのか。なぜわたしがその声に聞き従ってイスラエルの民どもを去らせなければいけないのか。私は主など知らないし、その民とやらも去らせはしない」
と言いました。 |
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パロは二人を退出させると、奴隷の監督に対してイスラエルの人々の労役を重くするようにと命じました。
「れんがを作る為の藁をもはや今までのようにこの民に与えてはならない。彼らに自分たちで藁を集めさせなさい。それでれんがの数は今まで通りで減らしてはならない。」
この命令によりイスラエルの人々の仕事量はほぼ倍増したので、人々は苦悩して口々にモーセに訴えました。モーセは主に
「主よあなたはどうしてこの民をこのようなひどい目にあわせるのですか?」
と叫びました。
「わたしはあなたがたをエジプト人の労役から導き出す。パロの元に行ってもう一度話してきなさい。」
再びモーセとアロンはパロの宮殿を訪れ、パロに懇願しました。するとパロは、彼らの神を証明するよう不思議な業を見せるように言いました。当時は不慮の事故や病気、戦に対してまじないや呪文で克服しようとすることが多く、呪術は非常に重要な役割を演じていたからです。
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パロの要求に応えて、アロンが持っていた杖を投げると、杖は瞬く間に蛇に変わり、パロの妖術師たちの業をも飲み込んでしまいました。けれども、パロはそれだけではイスラエルの神の力を納得できず、頑な心でイスラエルの民たちの要求を拒み続けました。
その為、主はモーセを通して10の様々な災いをエジプト人たちにもたらせました。災いは、まず、ナイル川の水が血に変わったことから始まりました。次にはカエルの大群が出現し、次はブヨ、アブの大襲来、家畜の疫病のおびただしい蔓延、膿のでる皮膚病の流行、落雷と降雹、イナゴの大襲来、最後に暗闇が国中を覆いました。
しかし、パロはこういった出来事は自然的に起こるものだと考え、未だイスラエルの主の力を信じませんでした。そこで主は最後の災いをエジプトに及ぼし、エジプト人の家庭で最初に生まれる男子の命をことごとく奪われました。主はこの災いからイスラエル人の子供たちを守るために、各家庭で傷のない一歳の雄の子羊を夕暮れ時に屠って焼き、その夜に酵母の入れないパンと苦菜を添えて食べなさいとモーセを通して伝えました。さらに家長には、一束のヒソプを、屠った羊の血に浸して家の門柱に塗るように言いました。主が血でしるしのつけられた家に来た時には「過ぎ越し」て、その家の人たちには災いを及ぼさないためでした。 |
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最後の災いがもたらされた時に、王家も含めてエジプト中の家庭にはあまねく死が訪れましたが、イスラエル人の男の子だけはこうして死を免れました。ここに至ってパロはついにイスラエル人の神の力を認め、モーセとアロンを呼び寄せて
「あなたがたとイスラエルの人々は立って私の民の中から出て行くがよい。羊と牛とを取って行きなさい」
と、請いました。
モーセとその民は、大急ぎで家財をまとめ、エジプトから「約束の地」カナンへ脱出するための準備に取りかかったことは言うまでもありません。イスラエル人の多くはモーセと共にエジプトを出ることを選びましたが、エジプトに留まることを選ぶ者も中にはおりました。エジプトにいれば少なくとも将来のことは予測できたからです。
いままでの悲惨な生活から逃れようと、異民族の奴隷やパロへの反逆をしていた人々も一行に加わって、エジプトを出た時には大勢の一行となっていました。彼らは荷物をロバや牛の背にくくり付けて羊や山羊の群れを沢山連れて、長い長い出エジプトの旅へと向かったのです。 |