今月の特集題
  
-苦難の中の喜び-

かの時に向かって




与えられた仕事
岡田 浩幸
 勤務している老人ホームに、信仰を持つ利用者が数名生活されている。みつばさの原稿がなかなか書けず、何人かのご利用者に「かの時って何ですかね」って聞いてみたら「かの時?なに、それ」「聖書にはそんな言葉ないわよね」との回答。そこで、ペトロの手紙一5章6節の御言葉「だから、神の力強い御手の下で自分を低くしなさい。そうすれば、かの時には高めていただけます。」を読んでみんなで大笑い。聖書をもっと読まないとね、なんて言い合ったりしました。それから少したって事務所に来て「かの時って、再臨するって意味だって。永遠の命って事よね」と教えていただきました。それで話は終わらず「もう今は永遠の命なんだって言われたけど、そうなの?」と聞かれ再び聖書の話。
 このような豊かな時間が与えられる仕事に携われる事に感謝の毎日です。
 毎週日曜日は愛泉教会の聖日礼拝の送迎、毎週木曜日は桶川伝道所の高橋悦子先生をお招きして灯会(聖書の学び)をおこなっています。施設に入所するまでキリスト教と関わりを持たなかったのに、灯会に参加するようになり、愛泉教会に繋がり信仰を持つようになった利用者もいらっしゃいます。
 洗礼は絶対に受けないと言いながら時々愛泉教会の聖日礼拝に参加される方もいます。様々な形で集会や礼拝に繋がる利用者の姿に神様のお働きを強く感じています。
 私が勤務する養護老人ホームは介護施設ではなく、昔は養老院と呼ばれていた施設です。しかし、昔と比べて高齢者の住まいは、サービス付き高齢者住宅や生活保護にも対応できる有料老人ホーム等、格段に増えており、全国的にも養護老人ホームの入所者は減少傾向にあります。私の施設も特にこの1年は退所される方が多く、経営的に厳しくなってきました。
 それでも福祉制度のはざまに陥ったり、契約になじまない高齢者を支援できる数少ない福祉サービスの一つとして役割を果たせるように経営再建に頑張っていきたいと思います。
 かの時と言う言葉を聞いて、夜間に急死された利用者の事を思い出しました。いつも元気で笑顔で冗談を言い、他の利用者や職員の事を気遣って生活されていた方でした。誰もが等しく死を迎える。でもそれがいつどのようであるかは誰にも分からない。だからこそ、主イエスが来られる時を待ち望みつつ、主に与えられた仕事を続けていきたいと願っています。
(おかだ ひろゆき)


この時の為に
山川 和三
 先日、不注意で家の中で以前怪我をした右足を怪我してしまい、丁度その時、仕事の打ち合せに来ていた玩具会社の社長の車で外科医まで送って頂き、足の傷を治療することができました。この歳になるまで病気や怪我で家族や友人たちに迷惑をかけて来たことを思い出しながら過去を振り返る時が与えられました。
 その中でも2014年6月に持病の喘息が悪化し、救急車で獨協医科病院に入院しました。診断して最初は2週間ぐらいで退院できるだろうと聞かされ妻も家族も一安心しましたが、退院する前日風呂から出てきて病室内でつまずき転倒して右足を打撲し、それからが大変な病院生活になってしまいました。又以前よりひどい呼吸困難になり咳込み酸素呼吸器が再び付けられ、幾日か、このような状態が続いて意識不明になり、主治医が妻に家族を呼んだ方が良いのではと指示されたようでした。家族や教会の兄姉牧師も来られ祈っていただきました。その後、意識もうろうとしたなかで主に祈り求め、詩編23編のみ言葉がこのような時に、与えられました。「たとえ 死の谷を歩むとしても私はわざわいをおそれません。あなたがともにおられるから」。この時、いつも主がともにおられるんだと恐れと苦しみから解放され、平安を頂きました。
 戦前満洲で死線をくぐり抜けてきましたが、今度の病から抜け出すことができるのか全ての思い煩いを主に委ねて待つことにしましたが、担当医が病床に様子を見に来た時、声をふり絞って「最初の点滴に変えて見てくれませんか」と頼みました。後に失礼なこと言ってしまったと後悔しました。意識がなくなり、それから幾日たったのか解りませんが、耳元で妻の声が聞こえてくるのを感じとり、再び命が与えられ、家族たちが驚きと喜んだ様子を今でも覚えています。
 主は私の病床に共におられ、痛みや苦しみを背負ってくださり、十字架を見上げ、主のご臨在を感じ試練が喜びとなった時でした。齢をとると色々なものが失ってゆき、足腰も弱くなり、眼も、耳も足も記憶力もなくなり昨日まで出来たことが出来なくなります。しかし、高齢になっても信仰を持ち続けている兄弟姉妹がたの姿を見る時、励まされます。その時のために、み言葉を日々思い巡らせて過ごして行き、子どもや孫たちに伝えてゆきたいと祈り願っております。
 私の入院中いのり励ましてくださいました以前の教会の兄弟姉妹牧師がた、そして妻や息子娘たちに改めて感謝します。 
(やまかわ かずみ)

越谷教会月報みつばさ2021年6月号特集
「かの時に向かって」より



特 集