今月の特集題　　聖書を読んで祈って伝道する

私の信仰の出発点

菊池　敬一

ちょうど30年になる、越谷教会で石橋先生から洗礼を授けていただいてから。 　信仰の出発点というと、何やら格好のいいものだが、これだというのはむずかしい。年中まで通っていた板橋区のまきば幼稚園はキリスト教保育だったということだし、小学校２･３年の頃にはどこかの教派の日曜学校に時々通っていたのをかすかに覚えている。しかし自分の体験として受けとめているキリスト教との出会いは、キリスト教放送ＦＥＢＣになる。 　中学生の頃、海外のラジオ放送を聴いて、報告書を放送局に送るとカードがもらえるＢＣＬというものが一部ではやっていた。ラジカセのダイヤルを回していると、１５７０キロヘルツになにやらキリスト教なるものが流れていて、韓国からのキリスト教放送局とわかり、興味半分に聞き始めた。そこで羽鳥純二先生の聖書通信講座に飛びついたがそのときは途中で挫折。　　　　　 　高校が男子校だったので当然近くの女子校の文化祭に出かける。そのときに聖書研究会の展示にふと足が向かった。女子校の文化祭の華やかさとは無縁の一角だったが、なにやら懐かしいものを感じた。通信講座を受けていたことを話したようで、その後いただいた手紙に「聖書通信講座も是非がんばってください」と書かれていた。これをきっかけにまたＦＥＢＣを聴くようになり、聖書通信講座を再開し完了することができた。 　浪人のときには、「恵子の郵便ポスト」というコーナーに投書し、吉崎恵子さんに励ましをいただいた。 　大学ではキルケゴールを学び、キリスト教に深く触れていった。大学生最後のクリスマスに初めて礼拝に出席。卒業後近くに教会を求めて、1986年10月12日に越谷教会をたずねた。 　翌年の2月22日、なんとＦＥＢＣの礼拝収録が越谷教会で行われ、あの吉崎恵子さんがお見えになられた。礼拝が終わると真っ先に、越谷教会員でもないのに「恵子の郵便ポストで読んでもらったことがあるんです」と駆け寄った。すかさずマイクが向けられ、そのときのやりとりが放送に流れた。 　その年のクリスマスに受洗。何度となくのＦＥＢＣとの再会、再出発の連続だったと思う。その中ですべてが備えられていた。みむねに感謝のほかはない。 　「何事にも時があり 　天の下の出来事にはすべて定められた　時がある。」(コヘレトの言葉3章1節)

(きくち　けいいち)

清水　義尋

困ったなあ、というのが正直なところです。 　何事にもはじまりというものがあるわけですが、「こと信仰の出発点」となると、果たしていつからはじまったのか。そもそもはじまっているのかどうかすら危ぶまれるような、か細い信仰しか持ち合わせていない僕にとって、僕の信仰はここからはじまりました！と胸を張って言えるのがいつなのか、正直言ってよく分かりません。 　例えば、明確な基準として受洗日を挙げることができるかもしれませんが、僕は洗礼を授かりたいと誰かに言ったことはありません。ぼんやりと教会で過ごしていたら、ある日いきなり「それじゃあ、よしくん。そろそろ受洗だから」と牧師に言われて、まあ断る理由も特にないか、なんて、信仰のかけらもない心持ちで洗礼を授かりましたので、僕にとっての信仰の出発点は受洗日であるとは言いずらいです。 　また、小学生時代、教会学校に通っていたのも、親に連れられて行っていたのが何となく習慣になっていたからであって、別に信仰深い子どもだったからではないですし。さらに、両親はひばりヶ丘教会の信徒ですので、生まれてからしばらくは、ひばりヶ丘で過ごしていたわけですが、その頃の記憶なんてほとんど残っていないわけで。そうなると、信仰者としての僕の歩みは一体どこからはじまったのだろうと、途方に暮れる想いです。 　パン屑を啄ばまれたヘンゼルとグレーテルのような、迷子状態です。 　何となくいつのまにか、神様を信じて、「神様、僕を助けてください」と祈るようになりました。しかし、よく考えてみると、それって不思議なことですね。 　僕は、あるとき尊敬している牧師に『信仰とは、受動的能動である』と言われたことがあります。僕は、このことばの意味を、信仰とは受動的に、一方的に神様から注がれるものであり、また、それを核として、能動的に乞い求めることで養われてゆくものであると解釈しています。身重の婦人が与えられた我が子の健やかな成長を想って自分のお腹を撫でる。そんな受動からはじまる能動が、人間の信仰であるのかもしれません。 　さて。僕は上手いこと話を有耶無耶にできたのでしょうか。もし、できていないのであれば、今日が僕の信仰の出発点ということでいかがでしょう。 　よし！今日から信仰者として歩もう！おや？歩いて行くと一軒のお家が見えてきた。何だか甘い匂いがするのだけれど……。

(しみず　よしひろ)

越谷教会月報みつばさ2017年12月号特集 「私の信仰の出発点」より