今月の特集題 み言葉による証し
中村壽美子 |
有名なマタイによる福音書6章26節のみことばです。ルカによる福音書では、鳥ではなく烏になっています。因みにノアが洪水の後に箱舟から最初に放したのも烏、二番目が鳩です。「みつばさ六月号」に写真を載せて頂きましたので、ご記憶くださっておいでの方もいらっしゃるかと思いますが、この春、我家はまさに「空の鳥を見よ」の体験をさせて頂きました。五月の初めにベランダから数メートル先にある桜の木に「雀鷹(つみ)」という種類の鷹の番(つが)いが巣を架け、抱卵、六月中旬五羽のヒナが孵ってスクスクと成長し、七月末に巣立って行きました。 猛禽類が人家近くに巣を作るのは珍しいなあと、ツミの凛々しい貌つきと姿の美しさに魅かれて、カメラ片手にワクワク過ごした三ヶ月でした。 聖書では「種も蒔かず、刈り入れもせず、倉に納めもしない」とあります。「だがあなたがたの天の父は鳥を養って下さる」と。でもこれではなんだか鳥が何も働かない怠け者代表みたいじゃない……と私は少々不満です。短い期間ではありましたが毎日ツミを観察していて気付かされました。なんと真摯に与えられた命を精一杯生きているのだろう、これこそが神さまの愛に応える姿ではないか!と。抱卵の一ヶ月、オスとメスは交代で仲睦まじく卵を温めました。大雨の日もじっと耐え、強い日差しには翼を大きく広げて陰を作り、自分は口ばしを開けて暑そうに喘いでいました。 ヒナが孵ってからはそれこそ夜明けから薄暮までせっせと獲物を運んで来ては千切って与えていました。夜は母ツミが羽の下にヒナ達を入れて一緒に寝ていました、ヒナ達はお尻を巣の外へ向けてピューッとフンを飛ばして巣の中を汚しませんし、親は柔らかい新緑の枝をくわえてきては巣を整えます。 ヒナ達が大きくなってくると、親鳥は少し離れた高い場所からじっと見守る時間が長くなりました。そして見事だと思ったのは、ヒナ達が巣の周辺の木立を飛び回るようになり、自力でセミなどを捕って食べ始めた時です。ピタリと親は来なくなりました。アッパレな子離れ!ヒナ達の自立!ツミの一家は、迷わず、怠けず、つぶやかず、与えられた命を懸命に生きていました。上昇気流に乗って今頃はどこかの大空を飛んでいることでしょう。 「あなたがたは、鳥よりも価値があるものではないか」このみことばがズシンと胸に響きます。 |
(なかむら すみこ) |
越谷教会月報みつばさ2013年11月号特集「み言葉による証し」より |