今月の特集題 み言葉に希望が与えられ
谷口 則之 |
僕が今の仕事を手に入れられたのは、奇跡以外なにものでもない。 今から30年前、僕は脱サラをして今の仕事を目指した。分かりやすく言えばフリーのカメラマン。これで生き延びることがどれほど難しいか、だいたい想像できると思う。 10年のサラリーマン生活を送ったが、知識で「成功報酬」という言葉は知ってはいたが、それが感覚的には分からなかった。よく、月給袋を貰う夢を見たものだ。 仕事が無くて無収入が続く時にそれをよく見た。すでに子どもが3人いた。無収入の時の恐怖は、足がすくむ思いをしたものだ。こういうときに僕は、キリストを知った。 心の底から困った思いをしたからこそ、「溺れるものは、わらをもつかむ」ものだ。そういうキリストとの出会いだった。 洗礼を受けた3番目の子がこの間、こう言う「困らなければ宗教は必要ない」と。 「安全」「気楽」「簡単」「便利」が当たり前の日本の今の生活では、宗教が必要なくなるわけだと思う。 僕は、最近になってやっとこのことが分かるようになった。当時は、必死で乗り越えるのが精一杯だった。 しかし、今思うとそうだったからこそ、僕は大きく成長させてもらえた。 結果として、僕はこの30年間を養ってもらえた。確かに烏より丁重に養ってもらえた。今日(7月28日)の説教でも聴いたとおりだ。 なんという不思議な方法で神様は導くのか体験で分かった。 脱サラしたてのころは、重荷を背負っている人を休ませてくれる体験をした。 今日一日の労苦は、今日一日で十分、ゆっくり休みなさい。そんな意味の言葉で僕は休めた。それを聞くことができなかったら、間違っても乗り越えることができなかっただろうことは、僕自身よく知っている。 信仰は、困ったことで強められ、確かになっていく。そこに神様の愛を感じるようになれた。これはこういう体験をしなければ分からない。艱難という体験をとおして希望が与えられるという不思議な成長。 ならば、子どもを育てる上で甘やかしてはいけないということが分かるはずだ。 子どもに適度な「不自由」「不便」「不快」そんな体験をシッカリと与えなければいけない。そういう子育てをお父さん自身でしましょうということを訴える活動を始めた。「親子で工作」という活動だ。これが僕の最大の捧げ物。これが出来るのは大いなる希望だ。多くのお父さんが子どもの心を健全に強く育てることができますように、これが僕の一番の祈りだ。 |
(たにぐち のりゆき) |
高橋 和美 |
私は以前お話したように、たくさんの本に囲まれて子ども時代を過ごしました。当時は製本技術が今のようではなかったので「落丁」になった本が我が家にたくさん届きました。表紙のない本、逆さまに表紙がついているものなどです。あまり外で遊ぶことを好まなかった私は次々に本を読んでいたように思います。 今日はその中の忘れられない一冊『ハイジ』のお話をいたしましょう。 ハイジがフランクフルトのクララとくらすようになってからのできごとです。ハイジは、おじいちゃんのところへ帰してくださるように、一心にお願いしました。その願いが叶わないからお祈りをやめてしまったのだと、クララのおばあさまに話します。 この後のおばあさまのことばが印象的なんです。「ハイジ、そうじゃないのよ、そう思ってはいけないわ。なにがよいことなのか、私たちは自分ではわからないけれど、神さまはちゃんとご存じなの。だから神さまはハイジにとって本当によいと思うときに願いを叶えてくださるんですよ」と…。私はこのお話を何回我が子に話したでしょうか?子育ての中で、子ども達に言いながら、実は自分自身に言っていたのだと、今では思います。 仕事と介護、そして育児、あの何年間は、「おばあさまのことば」が私を前へと進めてくれたのだと思います。 「あの時祈りを続けてよかった。こうしてピーターのおばあさんにさんびかの本を読んであげられる…。もう黒パンを食べなくていいのね。神さまがそうしてくれたのね」。やがてハイジはクララのおばあさまの言うとおりだったことを自覚します。「そうだ、もし神さまが、私がどうしてもってお願いしたことを、すぐかなえてくださっていたらこうはならなかったんだわ…。神さまはちゃんとお考えになって、私が思ったよりずっといいことをしてくださったんだわ。クララのおばあさまのおっしゃったとおりよ」。そしてこのハイジのひたむきな心ががんこなおじいさんの心をも開かせてしまうのです。 「ハイジはどこで神さまのことをおそわったんだね」「クララのおばあさまがおしえてくださったのよ。私たちが神さまのことを、忘れないでいたら、神さまも私たちのことをお忘れにならない」。 今でも本三昧の私ですが、この夏、娘の第三子出産のため、所沢に泊まり、孫達に本を読んで寝かせる機会を与えられました。この『おばあさまのことば』をいつか孫達にも伝えたいと願いながらこのお話を終えたいと思います。 (たかはし かずみ) |
(たかはし かずみ) |
越谷教会月報みつばさ2013年9月号特集「み言葉に希望が与えられ」より |