都電荒川線の思い出

鈴木まき子

 秋晴れの暖かい日、私は月一回の診察を受けるため東京の大学病院に連れていってもらいました。午前中で早めに診察が済みましたので、私の生まれ育った尾久の町を訪ねてみました。東京で都電が運行されているのは三ノ輪から早稲田の荒川線だけです。昭和二十一年この線に乗って私は女学校に通学していました。日曜日には三ノ輪から水天宮行きの都電に乗り換えて家族と共に西浅草にある日本キリスト教団浅草教会の礼拝に出席していました。
 都電には数々の思い出があります。私が幼い時に母が病に倒れ、都立大塚病院に半年間入院し面会に行った帰り、大塚駅で母が元気になって退院する事を子ども心にも必死に祈った思い出があります。
 春ともなると王子駅近くにある飛鳥山は桜の花が見事に咲きほこります。又五月のバラの季節には都電沿線に、一万三千株のバラが咲き人々の目を楽しませてくれる都電荒川線です。

   (すずき まきこ)

(写真:中井勇二)

越谷教会月報みつばさ2011年11月号「Tea time」より