第12日


12月14日(木)






                
 
ですから、今、時のある間に、すべての人に対して、特に信仰によって家族になった人々に対して、善を行いましょう。
 (ガラテヤの信徒への手紙6章10節)




 ある年のクリスマスもま近のある日、ウェンデル家の子供たちはとてもとても悲しい気持ちでいました。大好きなママが重い病気にかかってしまったからです。パパは他のことが何も考えられないほどママのことを心配していました。子供たちは神さまに「ママがよくなりますように」と毎日お祈りしました。
 クリスマスの日、ママはベッドから出て部屋のサンルームのソファーに横になれるほど具合が良くなっていました。子供たちはママの部屋にクリスマスプレゼントの入った靴下を持って集まってきました。ママの目の前でプレゼントを開けたかったからです。子供たちがママのまわりに座ると、ママが彼らを見渡して
 「あなたたちはいつものクリスマスと同じくらい幸せそうに見えるわ」
とにっこりしました。
 「でもママ、今年のクリスマスはいままでよりももっともっと幸せよ。」
ちびっこのアグネスが言いました。
 「だってママが良くなったんだもん、そうでしょ!」
ママとの楽しいひと時はあっという間に過ぎ、ママの付添いの看護婦さんがやってきました。
 「さあさあ、あなたたち、そろそろ部屋から出る時間です。そうしないとママは疲れてしまって今夜もう一度あなたたちと会えなくなってしまいますよ。」

 

 子供たちは子供部屋に戻ると頭を寄せ合ってママのことを話し合いました。
 「ねえ、なにかママが喜ぶことができないかなあ〜」
ちびっこアグネスがつぶやきました。
 「そうねえ、ママのために絵を描いてあげたらどうかしら?」
と、フランス人の家庭教師のマルセルさんが提案しました。
 「そうそう、それがいい!」
みんな声を揃えて叫びました。
 「それは楽しみだなあ、だってママは絵が好きなんだ!」
大きい兄さんのベンが言いました。
その日一日中、子供たちは絵を描くのに夢中になりました。大好きなママのためにそれぞれが思い思いに描きました。出来上がった絵はママの居間に通じるドアの横に置かれました。準備万端です。

 

 夜、家庭教師のマルセルさんはかしこまってママの居間のドアの前に立ちました。彼女はママに向かっておじぎをすると
 「ウェンデル夫人、じつは若い紳士淑女の方々がここに来てあなたに絵画を見て頂きたいと願い出ております。あなたはお会いになられますか?」
とスピーチをしました。彼女はまた、
 「ご覧になれば、きっとあなたはその絵に魅了されることでしょう。」
と付け加えました。
ママの許可を得たマルセルさんは、一歩進み出て広くドアを開けるとこう言いました。
 「まず第一の絵画は『眠れる森の美女』第二の絵画は『赤ずきん』第三は『妖精の女王』第四の絵画は『ハバードおばあさん』そして最後の絵画は『海軍司令長官』です。」
マルセルさんは全てを完璧にこなしました。また、メイドのセレステはマルセルさんを手伝って、全部の絵画を間違えることなくタイミングよく掲げることが出来ました。

 

  ママが喜んだことは言うまでもありません。ママはこう言いました。
 「なんて素敵な絵でしょう!思いがけず素晴らしいプレゼントを戴いたわ。それを描いた魅力的な紳士淑女に是非お目にかかって、お礼のキッスをしなければいけないと思うの。」
 すると、バラ色のほっぺをした紳士淑女たちがママの部屋へニコニコして入ってきました。
 「あれ、あなたは我々をご存じでしたでしょうか?」
と小さい提督閣下が吹き出すのをこらえながら尋ねました。
 「そうね、あなたたちのこと前から知っているような気がするわ。うふふ。」
そして、ママは大層満足気に言いました。
 「なんて素敵だこと!わたしのちびっこアグネスとおんなじね!こんな楽しいクリスマスは未だかつてなかったわ!」


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